シワ改善有効成分VEP-Mを透明な状態で非水系製剤に配合する新技術を開発

2026/09/10 (2026/09/10更新)

日本メナード化粧品 総合研究所


日本メナード化粧品 総合研究所
 日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、医薬部外品のシワ改善有効成分である安定化ビタミンE誘導体「dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウムM(VEP-M)」を、水を含まない「非水系製剤」において、透明な状態で配合できる新たな製剤技術を開発しました。
 本技術により、従来はVEP-Mの配合が難しかったオイル美容液やリップグロス、リップクリームなどの非水系製剤にも、VEP-Mを透明な状態で配合することが可能になりました。



 医薬部外品のシワ改善有効成分である安定化ビタミンE誘導体「dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウムM」(以下VEP-M)は、両親媒性の構造を有するものの親水性が高い性質を持つことから、これまで美容液などの水を含む製剤に配合されてきました。一方、オイル美容液やリップグロス、リップクリームなど、水を含まず油を主成分とする非水系製剤にVEP-Mを配合すると、均一に混ざり合わなかったり、時間の経過とともに凝集や沈殿が生じたりするなどの課題がありました。
 そこでメナードでは、VEP-Mを非水系製剤に配合するため、化粧品に保湿剤などとして広く用いられている多価アルコールに着目し、成分の組み合わせや組成比を検討しました。その結果、VEP-M、極性油、特定の多価アルコールの3成分を適切な組成比で混合することで、VEP-Mを含む透明な液体が得られることを発見しました。
 さらに、この透明な液体を電子顕微鏡で観察したところ、ナノサイズのカプセル状構造(ベシクル)が形成されていることを確認しました。通常、ベシクルの形成には特殊な装置や大きな物理的エネルギーが必要ですが、本技術では簡便な加熱・混合プロセスのみで透明な液体状態が得られることから、成分同士が自発的に秩序正しく並び替わる「自己組織化」が起きていると考えられます。
 VEP-Mには、シワ改善効果に加え、メラニンの生成を抑えてシミ・ソバカスを防ぐ効果や、ニキビ・肌荒れを防ぐ効果もあります。今回の技術により、こうした複数の美容効果を持つVEP-Mを、水を含む製剤だけでなく非水系製剤にも配合が可能となり、幅広い剤形への展開が可能になります。今後も、VEP-Mの可能性を広げる製剤技術の研究を進め、より多様な製品開発につなげていきます。
 なお、本研究の成果は2026年9月3日から5日にかけて広島で開催された第64回日本油化学会年会にて発表しました。
<参考資料>
1.医薬部外品のシワ改善有効成分「VEP-M」の特徴
 「dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウムM」(以下VEP-M)は、安定化ビタミンE誘導体とも呼ばれ、ビタミンEの安定性を高めた成分であり、「シワを改善する」効果を持つ有効成分としてメナードが初めて承認を取得しました。VEP-Mには、シワ改善効果に加え、メラニンの生成を抑えてシミ・ソバカスを防ぐ効果や、ニキビ・肌荒れを防ぐ効果もあり、複合的な美容効果が期待される医薬部外品成分です。
 VEP-Mは両親媒性の構造を有するものの親水性が高いため、これまでは水が主成分である水系・乳化系のスキンケア製剤への配合に限られていました。
 しかし、オイル美容液やリップグロス、リップクリームなどは、油を主成分とする非水系製剤が主流であり、親水性の高いVEP-Mを単純に配合しても、均一に混ざり合わなかったり、時間経過とともに凝集や沈殿が生じて白濁したりするなどの課題がありました。

2.VEP-M、極性油、特定の多価アルコールとの組み合わせで、透明化を実現
 VEP-Mを非水系製剤に配合するために、保湿剤として化粧品によく用いられる多価アルコールに着目し、検討を行いました。VEP-M、油(極性油)、多価アルコールの3成分を加熱・混合したところ、1,3-ブチレングリコール(BG)やグリセリンを配合した場合は白濁したのに対し、ジプロピレングリコール(DPG)を配合した場合は透明な液体が得られました(図1)。さらに検証を進めた結果、DPGを含む3成分を特定の比率で組み合わせたときにのみ、本来は互いに混ざり合わない成分同士が透明な液体になることを発見しました。
 本技術の大きな特徴は、3つの成分のうちいずれの2成分を組み合わせても、透明に混ざり合うことはなく、3成分すべてが揃ったときにはじめて透明な液体状態が得られる点です。また、この透明な状態は、VEP-Mを高濃度で配合しても維持されることを確認しました。あらかじめ作製した高濃度の透明液体に後から油を加えて薄めても、透明性がそのまま維持されるため、製品特徴に合わせた柔軟な処方設計が可能になります。そのため、汎用性の高い技術として、様々な製剤への応用が期待できます。

図1 多価アルコールの違いによる外観差

3.自発的に形成されるナノサイズのカプセル状構造「ベシクル」
 VEP-M、油(極性油)、ジプロピレングリコール(DPG)の3成分が組み合わさったとき、なぜ透明な状態になるのか。そのカギを握るのが、成分同士が自発的に秩序正しく並び替わる「自己組織化」という現象です。
 通常、水と油のように反発し合う成分は、混ぜ合わせても時間とともに分離してしまいます。しかし、今回発見した特定の組み合わせでは、水になじみやすい部分と油になじみやすい部分のバランスを保ちながら、成分同士が反発することなく、「居心地の良い」安定した配置へと自然に並び替わっていると考えられます。
 実際に、クライオ透過型電子顕微鏡(Cryo-TEM)を用いて、VEP-Mが低濃度の透明な液体の内部構造を観察した結果、成分がバラバラに散らばっているのではなく、ナノサイズのカプセル状構造を形成していることが明らかとなりました。これは「ベシクル」と呼ばれる構造で、VEP-Mが向かい合うように並んだ2層の分子膜が球状になっている状態です(図2)。通常、ベシクルを形成させるためには、超音波や高圧乳化機などの特殊な装置を用いて大きな物理的エネルギーを加える必要がありますが、本技術では、特殊な機器を使用せず、簡便な加熱・混合プロセスのみで自発的にベシクルが形成され、透明性が保たれる点が非常に画期的です。

図2 ベシクルのCryo-TEM画像と模式図

 さらに、ベシクルを形成していることから有効成分を標的部位へ効率的に届けるDDS(ドラッグデリバリーシステム)様の効果も期待できます。ベシクルの内部や層間に油性、水性の有効成分をそれぞれ保持させることで、多様な成分を安定して効率よく届けるといった、新たな高機能製剤への応用展開の可能性も見出されました。

 今回開発した技術によって、VEP-Mを透明な非水系化粧品に配合できる可能性が広がりました。今後は本技術を活かし、お客様のニーズに応える独創的で付加価値の高い製品開発に取り組んでいきます。
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