シワには“シワのための保湿メカニズム”があることを発見

2026/05/15 (2026/05/15更新)

ポーラ・オルビスHD


ポーラ・オルビスHD
小ジワ・シワともに、保湿因子を増やす酵素・SASPaseがカギ

 ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、シワ部位特有の乾燥感に着目した研究を進め、以下の3点を発見しました。
1. シワ部位では、保湿因子フィラグリンを増やす酵素「SASPase」の発現が減少していること
2. 表皮細胞でSASPaseの発現が減少していると、好中球を誘引する「IL-8」の発現が増加すること
3. ヒメフウロとクチナシの混合エキスが、表皮細胞でSASPaseの発現を増加させ、IL-8の発現を減少させること

 本研究により、シワ部位では「うるおいを保持しづらい角層構造」と「真皮のシワを生み出す環境」が同時に形成されており、“シワ特有の乾燥状態”となっている可能性が示されました。

シワ部位ではSASPaseの発現が減少し、水分を補ってもうるおいにくい角層環境に

 ポーラ化成工業はシワ改善のパイオニアとして長年研究を続けています。そんな中、「シワ部位は保湿ケアをしても乾燥感が残る」という生活者の実感に着目し、シワ部位に特有の乾燥メカニズムがあるのではないかと考えました。そこで、シワ部位における表皮細胞の遺伝子を網羅的に解析したところ、シワがない部位と比べて、SASPaseと呼ばれる酵素の発現が減少していることを見出しました。
 SASPaseとは、角層の中で働くプロフィラグリンというタンパク質を、正しく機能できる形に切断する酵素です。切断されたプロフィラグリンはフィラグリンとして働き、角層細胞の構造を整え、水分を保持しやすくする役割を担います。一方で、プロフィラグリンが適切に分解されないと、角層細胞の構造が乱れ、水分を保持しにくい角層になることが知られています。つまり、シワ部位ではSASPaseの減少により、「水分を補ってもうるおいにくい角層環境」となり、乾燥による小ジワが生じやすくなると考えられます(図1-A、補足資料1)。



SASPaseの減少は、真皮のシワ形成にも関与しうる 

 シワの原因には、大きく2タイプあります。表皮の乾燥によるものと、真皮構造の分解や劣化によるものです。そこで、SASPaseが真皮のシワ形成の方にも影響しているか検証しました。研究の結果、表皮細胞ではSASPaseの発現が減少すると、IL-8が増えることを突き止めました(図2、補足資料2)。IL-8には、真皮の好中球を呼び寄せる働きがあり、好中球はエラスターゼなどのタンパク質分解酵素を放出します。好中球エラスターゼがコラーゲンや弾性線維の分解を引き起こし、シワの原因となります。したがって、SASPaseが減少した状態では、シワが真皮まで刻まれやすくなると考えられます(図1₋B)。
 以上より、SASPaseの減少は、乾燥による小ジワを引き起こすだけでなく、IL-8増加の影響を介して真皮のシワ予防にも繋がる可能性が示されました。



SASPaseを発現促進、IL-8を発現抑制するエキスを発見

 SASPaseの発現を増やす素材を探索したところ、ヒメフウロとクチナシの混合エキスにSASPaseの発現を増やす作用と、IL-8の発現を抑える作用があることを発見しました(補足資料3)。つまり本混合エキスは肌のうるおいを保持して小じわに働きかけ、好中球を呼び寄せないことで真皮のシワ予防にも働きかける可能性が示唆されました。
 
 
 本研究からポーラ化成工業は、シワ部位特有の乾燥感を解明し、「シワにはシワのための保湿がある」という新たなスキンケア概念を提案します。
【補足資料1】 SASPaseの減少が水分保持しにくい角層につながるメカニズム
フィラグリンによるケラチン線維の結束と水分保持機構
 フィラグリンは角層を構成する重要なタンパク質の一種です。フィラグリンは、はじめ数珠つなぎ状のプロフィラグリンとして合成され、その後、切断されて単体のフィラグリン(単量体)として機能します。単体のフィラグリンは、角層細胞の中にあるケラチン線維(細いタンパク質の繊維)を束ねることで、角層細胞の構造を整え、水分を保持しやすい状態にする働きがあります。

SASPase低下が引き起こす水分保持能の低下による小ジワ形成
 SASPaseは表皮の顆粒層(角層のすぐ下にある層)に存在する酵素で、プロフィラグリンを分解して単体のフィラグリンに変えるはたらきを持っています。一方で、SASPaseが減少すると、プロフィラグリンが十分に分解されず、2、3個に繋がったフィラグリン(2量体・3量体)となり、単体のフィラグリンが不足してしまいます。すると、ケラチン線維がうまく束ねられなくなり角層細胞の構造が乱れてしまいます。その結果、角層は水分を保持しづらい構造となり、水分を補っても抱え込みにくく、乾燥による小ジワが生じやすい状態になると考えられます。(図3)



【補足資料2】 SASPaseの発現が減少すると、IL-8の発現が増加する
 SASPaseの発現部位である表皮において、好中球に関連する遺伝子との関係を調べました。その結果、SASPaseの発現が減少した表皮細胞では、正常な細胞と比べて、IL-8の発現が増加していることが明らかになりました(図4)。
 このことから、SASPaseの発現量はIL-8を介した好中球の浸潤(組織内への移動)をと関係し、皮膚のより深い層である真皮におけるシワ形成にも関与していることが示唆されました。



【補足資料3】 表皮細胞のSASPaseの発現を高め、IL-8の発現を減少させる混合エキスの発見
 表皮細胞においてSASPaseの発現を増加させる素材を探索しました。その結果、ヒメフウロとクチナシの混合エキスが、SASPaseの発現量を約2倍に増加させることを見出しました(図5)。
 また、混合エキスとIL-8の発現量との関係を調べたところ、IL-8の発現量を約30%減少させる作用も確認されました(図5)。 



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