テーマは「CURA(ケア)」。290ブランドから見えた、香水市場の現在地
■ イタリア政府機関ITAの招待により、日本から唯一のメディアとして参加

香水・フレグランスのメディアを運営するAmulette株式会社(東京都渋谷区、代表取締役:長田寛太)は、イタリア大使館 貿易促進部(Italian Trade Agency/ITA)の招待を受け、2026年9月11日(金)~13日(日)、イタリア・フィレンツェで開催された国際香水見本市「Pitti Fragranze 2026(第24回)」を現地取材しました。
ITAは、イタリア企業の海外展開を支援する政府系の貿易振興機関です。
今回、50を超える国・地域から視察団が訪れる中、日本からは百貨店やディストリビューターが参加。
Amuletteは、日本唯一のメディアとして現地取材に臨み、ブランド創業者や調香師、輸入代理店へのインタビューを通じ、新作やトークプログラム、市場データなど、香水業界の最新動向を多角的に捉える機会をいただきました。

ITAから当社に届いたPitti Fragranze 2026の招待状(Invitation Letter)
■ Pitti Fragranzeとは
Pitti Fragranzeは、世界最大級のメンズファッション見本市「Pitti Uomo(ピッティ・ウオモ)」などを運営するイタリアの見本市運営会社、ピッティ・イマージネ(Pitti Immagine)が毎年9月に開催する、国際的に注目される香水の商談見本市です。世界50以上の国・地域から調香師、バイヤー、メディア、流通関係者が集まる、アーティスティックパフューマリー(ニッチフレグランス)とインディースキンケアに特化した、欧州を代表する見本市として知られています。
■ 開催概要

主要な来場国は、フランス、スペイン、ドイツ、アラブ首長国連邦、英国、米国が上位を占め、スイス、リトアニア、ポーランド、中国が続きました。韓国、日本からの来場もあり、幅広い国・地域から関係者が集まりました。

会場となったStazione Leopolda(スタツィオーネ・レオポルダ)の入口
■ テーマは「CURA(ケア)」、4つのエリアで構成
今回のテーマ「CURA」はイタリア語で「ケア」を意味し、守ること、慈しむこと、深く探求することを表しています。香りを単なる嗜好品ではなく、人の心と身体に寄り添う存在としてとらえ直す視点が、トークプログラムと展示の全体を貫いていました。
プログラムのキュレーションは、ジャーナリストのパオラ・ガリボルディ氏と、パリを拠点とするシルヴィア・マンゾーニ氏が担当しました。

左上から時計周りに、Fragranze/Spring/Code Korea @ Fragranze/Soul & Skin(写真提供:Pitti Immagine)
~4つのエリア~
【Fragranze】世界各国の香水ブランドが集まるメインエリア。伝統的な製法を受け継ぐメゾンから、現代的な解釈を打ち出す新興ブランドまでが軒を連ねた。
出展ブランド:Histoires de Parfums、Etat Libre d’Orange、Caron(以上フランス)、Floris、Miller Harris(以上英国)、Mizensir、Tauer Perfumes(以上スイス)、Carner Barcelona(スペイン)、Ajmal(アラブ首長国連邦)、Lorenzo Villoresi、Farmacia SS. Annunziata dal 1561、Carthusia I Profumi di Capri(イタリア)など。
【Spring】初出展・新進ブランドを紹介するエリア。
出展ブランド:Almost Human、Bontemps Paris、オーストラリアのPeosym、Cent.pm、イタリアのEgoscentriqueなど。
【Soul & Skin】2025年に新設されたインディースキンケアのエリア。
出展ブランド:日本のwarew、スウェーデンの音楽プロデューサー、マックス・マーティン氏が携わるブランドObayaty、Petite Amie Skincare、イタリアのLuce di Sorrento、Bakel、Perennaeなど。
【Code Korea @ Fragranze】今回新設された、韓国のビューティーブランドの特設エリア。韓国コンテンツ振興院(KOCCA)との協働により実現した。
出展ブランド:Deardot、Dermathod、Varol、Purepeakなど。
ピッティ・イマージネのCEO、イヴァーノ・カウリ氏は会期後、「今回のフレグランツェと、会場に流れていた空気に大変満足している。この見本市は正しい方向に進化しており、国際的な基準点としての地位を確立しつつある」とコメント。
現地取材メモ
4つのエリアは、単なる区画整理ではなく順路そのものがメッセージになっていました。
メインのFragranzeから、新進ブランドのSpring、スキンケアのSoul & Skin、そしてCode Koreaへと歩くうちに、「香り=香水」という枠が自然にほどけていきます。
香水とスキンケアを地続きに配置し、その両方を「CURA」という1語でくくる。この編集の意思が、今回の見本市で最も強く伝わってきた部分です。
日本の百貨店では、フレグランスとスキンケアは別のフロア、別の担当者、別の予算で動いていることが多い。しかし生活者の朝の所作を思い返せば、化粧水を塗り、クリームを重ね、最後に香りを纏うまでは一続きの時間です。売り場の区分と生活者の体験のあいだには、まだ距離があります。「香りで整える」という文脈で両者を束ねる編集は、日本の売り場にとって次の打ち手になり得ると考えています。
■ 現地取材から読み解く、2026年の香水シーンを象徴する5つの潮流
1. 巨匠調香師とファッションデザイナー、2つの「デビュー」
自身初のメゾン「Apollinaire」を発表したマスターパフューマー、ダニエラ・アンドリエ氏。(写真中央)
プラダ、メゾン マルジェラ、グッチなどの香りを手がけてきたマスターパフューマー、ダニエラ・アンドリエ氏は、自身初のメゾン「Apollinaire」を立ち上げ、6種のフレグランスを世界に先駆けて公開しました。共同創業者は、プラダとミュウミュウのデザインディレクターを務めたファビオ・ザンベルナルディ氏。2027年1月の発売を予定しています。
スペシャルゲストとして登場したのは、2024年のLVMHプライズでファイナリストに選ばれたイタリア人デザイナー、ニコロ・パスクアレッティ氏。
Mane Italiaのヘッドパフューマー、クリスティアーノ・カナーリ氏とともに、初のフレグランスブランド「Andara」を発表しました。祖父が収集していた「アンダーラ・クリスタル」を着想源に、「White」「Blue」「Red」の3種のエクストレ・ド・パルファムを展開。アーティスト、アリツィア・クワデ氏によるインスタレーションとともに披露され、結晶を思わせるボトルも印象的でした。
現地取材メモ
注目すべきは、アンドリエ氏が数十年にわたりメゾンの名前の裏側で香りをつくってきた調香師だという点です。その人が自分の名前で6本を世界に問う。しかも組む相手は、同じくメゾンの中枢にいたデザインディレクターです。ブランドの器から中身のつくり手が独立し、器を自分たちで設計し直す動きだと理解しています。パスクアレッティ氏の側は逆のベクトルで、世界観を持つデザイナーが香料会社の名匠を迎え、香りという形式を選んでいます。調香は名匠が、世界観はデザイナーが担う。この分業のかたちは、日本のブランドにも応用が利くはずです。
日本では長く、香りは「ブランドの付属品」として語られてきました。しかしニッチフレグランス市場でこの5年に起きたのは、調香師個人の名前が指名買いの理由になる変化です。国内でも、誰が調香したかを表示し、その思想を語る売り方が一般化していくと見ています。つくり手を前に出せるブランドと、出せないブランドのあいだで差がつく。これが日本市場における次の分岐点だと考えています。
2. 伝統と革新が共存する、イタリアの香り文化

世界的に高い評価を受けるイタリアの調香家、ラウラ・ボゼッティ・トナット氏(写真左)
創業1561年を掲げる老舗薬局「Farmacia SS. Annunziata dal 1561」、新作を発表した「Lorenzo Villoresi」、カプリ島の「Carthusia」など、土地の歴史を香りに託すブランドが集まりました。一方で、調香師メオ・フシウーニ氏は「嗅覚の未来派宣言」と銘打ったプロジェクト「L'Istituto dell'Odore(嗅覚研究所)」を発表し、調香師ラウラ・ボゼッティ・トナット氏は活動40周年を迎え、その歩みが紹介された。
現地取材メモ
長い歴史を持つブランドと、未来の香りを模索する調香師が同じ場に存在する。伝統を守るだけでなく、現在の市場で更新していく姿勢がイタリアの強さだと感じました。日本にも香道や香木など豊かな香文化があります。伝統を「保存するもの」ではなく、「現代の市場でどう語り直すか」が、海外展開の鍵になりそうです。
3. 世界のニッチフレグランスを支える、イタリアの流通網
イタリアの輸入代理店が、世界のニッチフレグランスを欧州市場へ届けるハブとなっていました。イタリアからの出展約60社のうち、上位10社だけで110を超えるブランドを取り扱い、Miller Harris、Caron、Etat Libre d'Orange、Tauer Perfumes、Mizensirなど各国の人気ブランドを専門店網へ展開しています。ひとつのブースに複数国のブランドが並び、担当者は香りの背景から販売実績まで熟知。単にブランドを増やすのではなく、育て、市場へ届ける役割を担っていることが伝わってきました。
現地取材メモ
こうした代理店は、単なる卸売業者ではなく、ブランドの価値を市場の言葉に翻訳する「キュレーター」です。日本のブランドが欧州へ進出する際も、製品を売り込むだけでなく、「誰に見つけてもらい、誰に語り継いでもらうか」が重要です。海外展開では、ブランドと市場をつなぐ「翻訳者」の存在が大きな意味を持ちます。
これは日本国内でも同じです。海外のニッチフレグランスを紹介する際も、輸入して並べるだけではなく、そのブランドの価値や物語を日本の生活文脈に翻訳する役割が必要です。当社がメディアとして担うべき機能も、まさにここにあると考えています。
4. 香水は「売る」から「体験する」へ

Givaudanによるプレゼンテーション「Fragrance as a Social Link」
香水と人が出会う場にも変化が見られました。フランスのトレンド予測機関NellyRodiのビューティーディレクター、クロエ・アルジョナ氏は「店舗の外に広がる新しい嗅覚体験」をテーマに講演。「香りとは身体的な体験であり、購入はそれに続くものにすぎない」「オンラインから切り離されることが、新しい贅沢になっている」と述べました。Givaudanも「人と人をつなぐものとしての香水」をテーマに登壇しています。
現地取材メモ
「オンラインから切り離されることが新しい贅沢」という指摘は、日本市場にとっても重要です。ECでは香りそのものを体験できないからこそ、これからは実際に香りと出会える場の価値が高まると感じました。売り場の役割も、商品の陳列から「香りとの出会いを設計する場」へ変わっていくのではないでしょうか。
当社の香水スプレー自動販売機「PERFUMATIC」が取り組む次世代型のフレグランス体験も、その一例です。専門店に足を運ぶ前に、街の中で複数の香りを気軽に試せる導線をつくる。香りと出会う場所を店頭の外へ広げることが、今後の重要なテーマになると見ています。
5. 香りの中心が広がる。韓国・中東、そして日本

今回新設された「Code Korea @ Fragranze」。韓国のビューティーブランドが集まった(写真提供:Pitti Immagine)
「香水の地理的な中心は移りつつある」。キュレーターのシルヴィア・マンゾーニ氏の言葉どおり、新設の「Code Korea」にはDeardot、Dermathod、Varol、Purepeak。韓国からはほかにSisology、HBRNも出展。
Sisologyはカメラから着想したキャップを持つボトルで「香りと記憶」を形にし、HBRNは智異山(チリサン)の土壌を分析するなど、韓国の風景や文化を香りに落とし込んだ表現を披露しました。
中東のAjmal、The Spirit of Dubai、オーストラリアのPeosymなども存在感を示しました。
ジボダンの香料営業VP、ベルナルド・コーヴァン氏は「フランスとイタリアの伝統的な調香が、新しく多様化したグローバルな概念と並び立っている」と述べています。

日本のフレグランスブランド「J-SCENT」(撮影:Amulette)
日本からは、J-SCENTがイタリアの輸入代理店を通じて出展したほか、日本で香りを構想しフランス・グラースで製造するTomoo Inabaも出展。前回の第23回では日本のファッションブランド「SETCHU」がフレグランスデビューを果たしており、日本勢の存在感も少しずつ高まっています。
現地取材メモ
韓国勢の見せ方で印象的だったのは、「K-Beauty」という括りで安さや効率を訴えるのではなく、記憶、風景、物語という語彙で勝負していたことです。
山の土壌を分析して香りにする、カメラの形で記憶を表現するなど、欧州のニッチフレグランスが得意としてきた「物語の語り方」を、自国の風景に置き換えて実装しています。
さらに、国家機関(KOCCA)が特設エリアを設け、個々のブランドではなく、国として発信していた点も印象的でした。
日本にも、素材と美意識という点で同じ土俵に立てる資産がありますが、日本の香り文化を「日本のブランド群」として海外に提示する動きが求められるはずです。日本の香りが世界でどう語られていくのか、メディアとして引き続き注目していきます。
■ データで見る市場:成長を牽引するのは中小ブランド

会期初日に発表された、ピッティ・イマージネの市場調査「Osservatorio Fragranze」
会期初日には、ピッティ・イマージネの市場調査「Osservatorio Fragranze」の結果が発表されました。経済学者のマルコ・リッケッティ氏(Blumine)が、ブランド84社の2025年度決算を分析したものです。
- 2025年の売上は平均11.9%増。2026年も54%のブランドが5%超の成長を見込む
- 売上1億ユーロ超の大手は−0.3%と横ばいで、成長は中小ブランドに集中
- 直近3年の販売チャネル別の伸びは、自社EC+62%、香水専門店+37%
- 重視する販促手段は、インフルエンサー(66%)、専門店での推奨(58%)、口コミ(45%)の順
現地取材メモ
市場の成長を支えているのは大手ではなく中小ブランド。これは、今回の会場で見た光景とも重なります。生活者が求めているのは、誰もが知っている香りではなく、"自分だけの物語を持てる香り"なのだと思います。そして、そうしたブランドと生活者をつなぐ手段として、インフルエンサーが66%で1位に挙がっている。どのように発見され、どのように信頼されるか。その設計は、ブランドの規模を問わず、これからの香水市場の最も大きなテーマになると考えています。
■ 総括:世界の香水の現在地と、日本の展望
アーティスティックパフューマリーは、香りそのものから、つくり手の思想、ケア、体験、文化へと領域を広げています。担い手も、巨匠調香師、デザイナー、アジア・中東のブランドへと多様になり、それをイタリアの厚い流通網が支えています。
成長の中心は中小ブランドにあり、ブランドと生活者が出会う経路も変わりつつあります。こうした世界の変化を正確に、偏りなく伝えることは、日本の香水市場の成熟に欠かせない役割だと考えます。
■ 代表コメント

Amulette株式会社 代表取締役 長田寛太
このたび国内メディアとして唯一、Pitti Fragranze 2026に参加する機会をいただきました。ITAの皆さま、現地でご一緒した国内の百貨店・ディストリビューター各社の皆さまに、心より感謝申し上げます。数百年続く薬局と、独立した巨匠調香師、そして韓国や中東、日本の新しいブランドが、同じ会場で対等に並んでいる。その光景に、香水の世界がいま大きく開かれつつあることを実感しました。こうした世界の動きを、特定の立場に偏ることなく日本へ届けることが、香水メディアとしての当社の役割です。今回の取材で得た知見を、ブランドと業界の皆さまにも還元してまいります。
■ 会社概要

社名:Amulette株式会社
本社:東京都渋谷区恵比寿4-20-3恵比寿ガーデンプレイスタワー18階
代表者:長田寛太
事業内容:香水・フレグランス領域に特化したメディア運営、次世代型フレグランス体験「PERFUMATIC」の展開、ブランド・マーケティング支援
URL:https://amulette.co.jp/
◻︎各SNS一覧
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■ 本件に関するお問い合わせ先
Amulette株式会社 PR担当
E-mail:info@amulette.co.jp
TEL:03-6820-5465(受付時間:平日10:00~19:00)
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