~ 株式会社ファンケル、鳥取大学との共同研究成果を発表 ~
株式会社ファンケルは、鳥取大学と共同で、安全性と鮮やかさを兼ね備えた新しい赤紫色の無機顔料「CaCoGe2O6」および「CaCoSi2O6」を開発しましたのでお知らせします。
一般的にメイク品は、美しい色を実現するために合成色素(タール系色素)(1)を使用しますが、合成色素はアレルギーを起こしやすいと言われている成分です。そのため当社では合成色素を使わずに、肌にやさしい無機顔料(2)を採用していますが、無機顔料には、安定性と安全性に優れている一方、色の鮮やかさが低く、仕上がりがややくすんだ印象になりやすいという課題がありました。開発した顔料は従来の無機顔料と同等の安定性と安全性を持ちながら、鮮やかで美しい発色が実現できるものです。今後、本研究で得られた知見を生かし、無機顔料を使用した色鮮やかなメイク化粧品の開発に応用していきます。
この成果は「2025年度 色材研究発表会」にて発表しました。
【研究方法・成果】
<輝石構造(3)を活用した新たな赤紫色無機顔料の開発に成功>
赤紫色無機顔料の開発にあたり、輝石構造に着目し、その構造を持つ複合酸化物(4)から開発を着手しました。輝石構造は、熱や光に強く、安定した性質を持ち、含有する元素の種類によってさまざまな色を示すことが分かっています。そこで、輝石構造を有する複合酸化物の中で、人体や環境に無害な元素で構成されている「CaMgGe2O6」を基本とし、色のもととなる金属元素を組み入れ、新規の赤色無機顔料となる金属元素を探索しました。
その結果、「CaMgGe2O6」の金属元素であるMg(マグネシウム)を同じく金属元素であるCo(コバルト)に置き換え、1200度の高温で焼成したところ、非常に鮮やかな赤紫色の無機顔料である「CaCoGe2O6」の合成に成功しました(図1左)。
しかし、「CaCoGe2O6」に含まれる金属元素Ge(ゲルマニウム)は化粧品での使用例が少ないため、化粧品に多く使用されている半金属元素のSi(ケイ素)へ置き換えを検討したところ「CaCoGe2O6」と同じ方法での合成が難しいことが分かりました。そこで、別の合成方法を検討し、桃色の無機顔料である「CaCoSi2O6」の合成に成功しました(図1右)。

<既存の赤色系顔料を超える鮮やかさであることを確認>
現在化粧品で広く使用されている赤色系無機顔料の酸化鉄とグンジョウ、赤色合成色素、そして今回開発した「CaCoGe2O6」と「CaCoSi2O6」について以下の内容で測定をしました。
- 色の測定にはLab表色系を使用し、L*(明度)、a*(赤色度)、b*(黄色度)の値を測定
L*は色の明るさを表す指標で、値が0に近いほど暗く、100に近いほど明るいことを示す。
a*は色の赤みを表す指標で、正に値が大きいほど赤みが強く、負に値が大きいほど緑みが強いことを示す。
b*は色の黄みを表す指標で、正に値が大きいほど黄みが強く、負に値が大きいほど青みが強いことを示す。
- 彩度(C)は、赤色度(a*)と黄色度(b*)の値から、計算式【√(a*)2+(b*)2】を用いて算出。
測定および算出した結果、開発した「CaCoGe2O6」と「CaCoSi2O6」は、既存の赤色系無機顔料である酸化鉄、グンジョウを超える鮮やかさと高い赤色度を兼ね備えていることを確認しました(表1、図2、図3)。



【研究背景・目的】
当社では合成色素を使わずに、肌にやさしい無機顔料を採用しています。しかし、無機顔料は安定性と安全性に優れる一方で、色の鮮やかさが低く、仕上がりがややくすんだ印象になりやすいという課題がありました。
そこで、安全性と鮮やかな発色を両立できる成分の開発を目指し、無機顔料の「安全性・安定性が高い」というメリットを生かしつつ、多彩な色に着色可能な複合酸化物の元素置き換えに取り組みました。なかでも今回、複合酸化物の一種である輝石構造をベースとした新しい顔料素材の開発に取り組みました。
【用語説明】
(1) 合成色素(タール系色素)
人工的に化学合成によって作られた色素。自然界には存在しない色や、天然色素では得にくい鮮やかさ、安定性、均一性などを目的として作られる。
(2) 無機顔料
土や石、金属などの自然にあるものをもとにして作られた色素。
(3) 輝石構造
ケイ素と酸素を主成分とする鉱物の主要な構造の一つで、SiO₄四面体が鎖状に連なっている。さまざまな岩石中に広く見られ、含有する元素によってさまざまな色を示す。
(4) 複合酸化物
2種類以上の金属が酸素と結びついてできた化合物のこと。金属の種類を組み合わせることで、さまざまな色を出すことができ、熱や光にも強いという特徴がある。
(5) 色度座標
色の「色合い」や「鮮やかさ」を定量的に表すための座標値。当社ではLab表色系を用い、L*(明度)、a*(赤色度)、b*(黄色度)を定量的に評価。
【研究員のコメント】

株式会社ファンケル 総合研究所 化粧品研究所 メイク開発グループ片岡 菜緒(かたおか なお)
肌に直接触れる化粧品は、単なる色や質感だけでなく、肌へのやさしさが重要であると考えています。無機顔料は落ち着きのある色みを表現することに優れており、安全性の点においても安心してご使用いただける成分です。しかし、より鮮やかな色みの表現には課題がありました。この課題を解消するため、私たちはこれまで安全性と鮮やかさを兼ね備えた無機顔料の開発に取り組んできました。
「肌へのやさしさ」を第一に考えながら、メイクを楽しむすべての方が満足できる製品を届けたいという想いから、日々製品開発や研究に取り組んでいます。本研究で得た技術や経験を生かし、より多くのお客様の日々を彩る化粧品をお届けできるよう努めてまいります。
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