昨年からつづく人気トレンド“ネオ グルマン”の現在地や、Z世代が再発見する“ヴィンテージ”、新たなキーワード“スローパフューマリー”など。最新のニッチフレグランス市場を読み解く5つのトピックをご紹介。

Esxence 2026
“香水砂漠”と呼ばれる日本の香水市場に一石を投じ、日本初のニッチフレグランス専門店を展開する「NOSE SHOP(ノーズショップ)」は、2026年6月上旬にイタリア・ミラノで開催された、世界最大級のニッチフレグランスの祭典「Esxence(エクサンス)2026」にて、最新トレンドをキャッチしてきました。
今年のテーマは、「Sensing the World(香りで世界を感じる)」。世界40カ国以上から400以上のブランドが集い、計4日間の会期で20,000人以上が来場。香りを通じて、文化や土地、人とのつながり=世界を感じることをコンセプトに掲げ、連日会場は熱気に包まれていました。また、今回Esxenceで開催されたカンファレンスセミナーにて、日本人として唯一NOSE SHOP代表 中森友喜が登壇。日本の香水市場の現在地とNOSE SHOPが提唱する文化や活動について発信しました。
本リリースでは、NOSE SHOPが現地で得た最新情報をもとに、2026年のニッチフレグランス市場を読み解く5つのトピックと、NOSE SHOP代表 中森が登壇したカンファレンスセミナーについてレポートします。
会場レポートダイジェスト動画はこちら:https://youtu.be/uTO0AK5d1mw
1. 世界40カ国・400ブランド以上が集結。拡張をつづける“ニッチフレグランス”
「Esxence(エクサンス)」は、 2009年から年に一度* 開催されている世界最大級のニッチフレグランスの展示会。今年は、20,000平方メートル を超える展示スペースに400以上のブランドが出展し、そのうち108ブランドが初参加。40カ国以上からブランドが集い、来場者数は20,000人以上を記録しました。世界各地から多様なブランドが集まる様子からは、ニッチフレグランスが一部のファンのための嗜好品にとどまらず、より広い文化として成長していることがうかがえる結果に。
また、Esxence共同創設者のMaurizio Cavezzali氏は、2026年を「来場者数と文化的プロジェクトの広がりの両面で、これまでで最も重要な回」と位置づけました。特に30歳未満の来場者が増え、一般公開日のチケットが事前完売したことは、香りへの関心が若い世代にも広がっていることを示しています。
さらに、26のカンファレンスセミナーには、世界中から60名以上のスピーカーが登壇。香調トレンドや各国市場の動向に加え、Z世代、TikTok、AIなど、香水を取り巻く文化やテクノロジーの変化にも焦点が当てられました。
* コロナ禍の2年間を除く
2. 2026年注目の香調トレンド。ネオグルマン、ティー、スキンセントの現在地

Esxence 2026 (画像左上から:ミルクを使用した新作「Perroy Parfum ホワイトデニム」/とうもろこしがモチーフの「Fascent コーン スター」/ミントラテがテーマ「Thoo アモーレ」/バナナを主役にした作品など、ネオグルマンの香りが多く発表されていた。)
今年の香調トレンドについては、世界中の香水をアーカイブするデータベース『Fragrances of the World』によるカンファレンスセミナーでも詳しく紹介されました。注目トレンドとして挙げられたのは、拡張するネオグルマン、ティーセントの深化、そしてスキンセントへの回帰。共通しているポイントは、強い拡散力や壮大なストーリーよりも、肌になじむ心地よさや、日常でまといやすい香りへと関心が移りつつある点です。
1.ネオ グルマン
従来ヨーロッパ発祥のお菓子のような甘い香りを指していた“グルマン”のアップデートとして、昨年から“おいしい香り”をより広く捉えた表現がトレンドに。今年はより洗練された方向へと広がり、ペイストリー(小麦)、蒸し米、砂糖漬けのフルーツ、リキュールノートなどを中心に、焼きたての温度感や穀物の香ばしさ、湯気を含んだような柔らかさなど、味よりも“質感”を感じさせる表現に注目が集まっています。グルマンは主役となる甘さから、香りに奥行きや温度を与える要素へと広がっています。
2.ティー
スモーキーな紅茶、抹茶、マテ茶、緑茶など、ティーセントがトレンドに。ウッディ、スパイシー、レザー、グルマンなど幅広い香調に重ねることができる点や、アジアの食文化や生活文化と結びつくモチーフも多く、香りを通して地域性や記憶を表現する流れとも重なります。
3.スキンセント
ここ数年の「ビーストモード」と呼ばれる、強く長く香るフレグランスへの反動として、肌に密着して香るスキンセントも、再び注目されています。繊細なアンバー、ミルキーなムスキーウッド、パウダリーなフローラル、柔らかなアルデヒドなど、日常の中でまといやすい香りや、静かなる贅沢(=クワイエット ラグジュアリー)を感じさせる香りへの関心が高まっています。
さらにセミナーでは、ニッチフレグランス市場が成長を続ける一方で、「ニッチであること」だけでは差別化しづらい成熟段階にあることも語られました。その中で、新作の製品数やSNSでの話題性だけでなく、ブランドの背景を伝え、実際に香りを試し、作り手の思想に触れることができる店舗やイベントでの“リアルな体験価値”が、今後さらに重要になると考えられています。
3. アジア発ブランドの存在感が拡大。香水市場はヨーロッパ中心から多極化へ

Esxence 2026(画像左上から:日本発のニッチフレグランスブランド「EDIT(h)」/連日大盛況となっていた韓国発「Borntostandout」/Exsence初出店となる韓国発「pesade」「Insenf」は、U NOSE SHOPでも展開中)
今年のEsxenceは、“アジア”が重要なキーワードのひとつに。韓国、中国、日本、東南アジア、中東などから多くのブランドが出展したほか、アジア各国のフレグランス市場に関するカンファレンスセミナーも複数開催。ニッチフレグランス市場が、ヨーロッパ中心の文脈からより多様な地域へと広がっていることが示されました。
また、ひと口に“アジア”と言っても、文化や消費行動、市場の成熟度はさまざま。共通して見えてきたのは、香水を受け取るだけではなく、自国の記憶や素材、生活文化を現代的に再解釈し、香りの表現として発信していく動きです。日本発のブランドからはEDIT(h)やJ-Scentが出展し、連日ブースに多くの来場者が集まる様子が見られました。
アジア発の香りとしては、抹茶や緑茶を思わせるティーセント、ライスをはじめとする食文化に由来するモチーフ、柚子、酒といった素材が、2026年の香調トレンドとも重なります。グローバルなネオグルマンやティーセントの流れの中で、アジア各地の生活文化や素材が、新たな香りの表現として取り入れられています。
アジア市場は、各地域の文化や美意識を取り込みながら、香りのモチーフやトレンドを生み出す地域としても、今後注目が高まりそうです。
4. Z世代が再発見するヴィンテージ。TikTok時代に求められる“本物”
TikTokをはじめとするSNSは、香水との出会い方を大きく変えています。これまで香水に接点のなかった若い世代が、ショート動画を通じてブランドや香調を知り、小規模なインディーズブランドも広告費に頼らず新たなファンと出会う機会を得ています。
一方で、ショート動画やバズを前提とした発信が広がるなかで、香水の奥深い背景やストーリーが簡略化される課題も見えてきました。会期中のセミナーでは、再生回数や一過性のトレンドだけではなく、そのブランドにしか語れない独自の背景や、作り手自身の言葉がより重要であることも語られました。
この流れは、Z世代のヴィンテージやヘリテージ(伝統)への関心ともつながります。ここでいうヴィンテージとは、単に古いものやノスタルジックなデザインを指すのではありません。Z世代にとってヴィンテージやヘリテージは、長く続いてきた歴史や積み重ねた物語があるからこそ信頼でき、自分らしさを表現できる“新しいラグジュアリー”として受け止められています。
TikTokで香水に出会い、そこからブランドの背景や作り手の思想、過去のアーカイブへと関心を深めていく。こうした動きは、SNS時代における香水の新しい入口でありながら、同時に情報が溢れる現代で“本物”を求める流れでもあります。
5. 新たなキーワード「スローパフューマリー」。AIの進化で問われる、香水の“価値”

Esxence 2026(画像左から:カンファレンスセミナー「Beyond the Launch Frenzy: The Emergence of Slow Perfumery」にてスローパフューマリーの代表例として紹介されるNeela Vermeire/新作「NEITH」)
会期中のセミナーでは、AIや神経科学を用いた嗅覚研究についても語られました。近年は、AIが調香師の創作をサポートするだけでなく、分子構造から香りの印象を予測する技術や、香りを嗅いだときの脳波、心拍、皮膚反応から感情の動きを読み取る研究が進み、香水づくりは感覚だけでなく、科学の側面も広がりを見せています。
一方で、「AIの技術が進化しても、最後に香りを選び、そこに意味を与えるのは人間である」という発信がありました。香水の価値は、機能や数値だけではなく、人がその香りに何を感じ、どんな記憶と結びつけるかによって形づくられていきます。
この考え方と重なるのが、会期中に語られた「スローパフューマリー」という新たなキーワードです。スローパフューマリーとは、新作発表のサイクルが速まり、短時間に話題化されてはすぐに次の香りへと関心が移っていく現在の流れに対して、スピードや話題性だけでは測れない、香水の価値を問い直す考え方です。作り手の思想や素材への敬意、土地や文化の背景まで含めて、時間をかけて香水と向き合う姿勢を指します。
その代表例として、NOSE SHOPで取り扱いのある、インドの文化や記憶を背景にした「Neela Vermeire(ニーラ ヴェルメール)」が紹介されました。土地の空気や個人の記憶、素材へのまなざしをひとつの香りに重ねていくあり方は、スローパフューマリーの考え方を象徴するものとして語られています。
AIやSNSの進化が、香水との出会いや表現の可能性を大きく広げてくれる一方で、香りに込められた背景を知り、実際に試し、自分の記憶のなかに残していく体験は、スローパフューマリーが示すように、これからの香水市場において大切な価値になっています。
NOSE SHOP代表 中森がセミナーに登壇。日本人として唯一、世界に向けて発信

Esxence 2026(画像:カンファレンスセミナー「Beyond the Bottle: Artistic Perfumery Through the Lens of Retail」にてNOSE SHOPの活動を発信)
今回のEsxenceでは、NOSE SHOP代表 中森友喜が、日本人として唯一、カンファレンスセミナーに登壇。NOSE SHOPとして初となる登壇プログラムは、『Beyond the Bottle: Artistic Perfumery Through the Lens of Retail』。次世代の作り手に対して、ニッチフレグランスの現在地を小売の視点から発信する内容です。
本セッションには、ニッチフレグランス業界の調査・発信を行う『Essencional』のコンテンツディレクター兼コンサルタントであるKaren Marin氏がモデレーターとして参加。また、イタリア・ミラノを代表するニッチフレグランス専門店『50ml』の共同創業者Matteo Stringhini氏も登壇。日本とイタリアの小売の視点から、ニッチフレグランスをどのように伝え、届け、育てていくのかについて意見が交わされました。
NOSE SHOP代表 中森は、NOSE SHOPが開拓してきた独自の文化について紹介。ミニ香水がランダムに当たる名物企画「香水ガチャ(R)︎」や、店頭で自由に香りを試せる「試香カップ」にあわせて、短くまとめたコンセプト文を香水に添える「100文字キャプション」など、かつて“香水砂漠”と呼ばれていた日本で行ってきた活動について発信したほか、ブランド創業者来日イベントやセミナー開催など、香りとの最初の接点を広げるための取り組みを共有しました。
国境を越えて会場で語られたのは、「小売は単なる販売チャネルではなく、ブランドの思想を翻訳し、ファンに伝え、香りとの関係を育てていく存在である」という視点です。香水の価値は、香り・ビジュアル・ストーリーそのものだけで完結するものではありません。どのように出会い、どのように試し、どのような言葉や体験とともに届けられるかによっても形づくられていきます。
NOSE SHOPはこれからも、世界各地で生まれる香りの表現や作り手の思想を発信するとともに、香りをより自由に、より身近に楽しむ文化の醸成を目指してまいります。

NOSE SHOP
NOSE SHOP
かつて“香水砂漠”と呼ばれた日本に、先陣を切って新しい香りの風を吹き込んだNOSE SHOP(ノーズショップ)。日本初* のニッチフレグランス専門店として、2017年8月にスタート。大きな鼻のオブジェや、鼻を色とりどりに塗られた石膏像を目印に、現在、東京、大阪、名古屋など、主要都市を中心に18店舗を展開しています。高級ブランドのイメージや、専門知識が必要というイメージを払拭し、香水初心者から愛好家まで、誰もが自由で気軽に楽しめる空間を提供。世界中の新進気鋭なフレグランスブランドを、独自の視点でセレクトし、最上級の香りと共に暮らす喜びや楽しさを届けることを目指しています。名物企画として、ミニ香水がランダムに当たるコンテンツ「香水ガチャ(R)︎」を展開。その他、デイリーフレグランスブランド「KO-GU(コーグ)」のプロデュースも手掛けるなど、香りのイベント、香りのメディアとしての情報発信やリアルなワークショップなどを開催し、常に新しい香りの体験を提供しています。
https://noseshop.jp
* 日本国内におけるニッチフレグランス専門店として 自社調べ(2026年6月時点)
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