【ニューヨーク=杉本佳子通信員】24年春夏ニューヨーク・コレクションは、ちょっと変わったテーマ選びが見られる。これまで誰も見向きもしなかったことに着目しないと、新しいクリエイションができないということか。それをファッションと結びつけ、服に落とし込み、完成度の高い服を作るのは、かなりの力量が問われる。
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アルトゥザッラの着想源は「ローズマリーの赤ちゃん」。デザイナーのジョセフ・アルトゥザッラは「タイムレスなホラーの名作」と位置づけ、その謎めいた魅力を日常着に落とし込んだ。伝統的な素材とシルエットにひとひねり入れる、そのさじ加減がうまい。例えば、縮小したように身頃と袖丈が短いジャケット。ダブルブレストであっても軽快感がある。コートもジャケットも、襟は丸みをつけたちょっとレトロなフラットカラー。しわしわのオーガンディあるいはサテンにビーズ刺繍をランダムに入れているが、謎めいたモチーフでフェミニンな感じではない。
今まであまりやってこなかったトラぺーズラインのミニドレスも目立つ。総チュールのミニドレスは頭から同色のチュールをかぶせ、ミステリアスに見せる。モデルはほとんど全員、左手にハンドバッグかクラッチを持ち、腕にカーディガンあるいは長手袋をかけ、暗いランウェーを歩いてくる。一見奇異なテーマを選びつつ、そのにおいを普通に着られる服にうまく取り入れた。
トリー・バーチは美術館でショーをするのが好きなようだ。過去にはクーパーヒューイット美術館とブルックリン美術館でショーをしたことがあるが、今回はアメリカ自然史博物館に今春新設されたギルダーセンターを会場に選んだ。