SNS時代に新聞ができること(五十君花実)

2016/03/13 00:00 更新


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16~17年秋冬レディスの海外コレクションサーキットが終了し、明日14日からはいよいよメルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク東京16年秋冬です!わーいドキドキ!!

 


16年春夏の東コレから。左からケイタ・マルヤマ、ラマルク、ミントデザインズ

 

がしかし、今季の東コレの具体的な話は一旦置いておきまして、ここで取り上げたいのは、海外コレクションで今シーズンの一大トピックとなっていた「既存のファッションショーという形自体、果たして今の時代に合っているんだろうか…?」問題について。

バーバリーやレベッカ・ミンコフ、マイケル・コース、クレージュといったブランドが、従来の「ショーで見せて半年後に売る」形式を改め、「ショーで見せてすぐに売る」というスキームを取り入れたことで、国内外のファッション業界がザワついております。

トム・フォードのように、実需期(半年後)に合わせて発表するために、予定していたショー自体を取りやめたブランドもありました。

ショーで見てすぐに買える。

…それ東京ガールズコレクション(TGC)じゃない?

というツッコミは既に各所でされまくっておりますが、当のTGCは、ここ最近はどうやって日本のカルチャーコンテンツとして中国に売り込むか、それと共に日本のガールズブランドをいかに大陸で売るかが最重要トピックになっております。

確か、来週3月19日開催のTGCは、中国にライブ生配信する予定だった気がする。

いかん話がちょっと脱線しました。

ファッションショーのあり方問題に話題を戻します。

ニューヨークブランドを中心とした、ショー後にすぐ売る動きに関しては、弊社のNY通信員、杉本さんが2月29日付けの繊研新聞3面でまとめております。お手元にある方はお読みください。

各都市通した総括としての記事も近日中に出るはずですので、そちらも要チェック~!

杉本さんの記事から少しだけ抜粋すると、

「毎シーズン、私のデザインがランウエーを歩く瞬間に、その画像や動画がソーシャルメディアやたくさんのウェブサイトに現れる。どこでも見られるのに、手に入れられるのは何カ月も先。実際に売り出される頃にはお客は飽きてしまう。正直、無理もないことだと思う」byレベッカ・ミンコフ女史

だそうでして。

SNSの隆盛や、ネットによってもたらされたファッションの変容に際して、こんな風にデザイナーたちは少なからず苦悩している。

それが理由の一つとなって、ショーシステムの見直しというムーブメントが起こっています。

一方、デザイナーたちの苦悩のコインの表裏として、我々媒体の側も猛烈に悩んでいます

特に、うちみたいな旧来型の紙メディア(更にその中でうちはオールデストだけど)は、どこも同じように悩んでいるんだと思います。(よそのことはよく知らんけども)

かく言う私も、先シーズンの東コレ中に、自分の仕事(=ショーを見てそのレビューを新聞に書く)に対して猛烈に悩みました。

ショーの直後から、いやむしろ真っ最中からSNSで画像が拡散していく時代に、「新聞にショーのレビューを書く意味って一体何なんだ?」って思ってしまったんですよね。

インスタグラムやツイッターは言わずもがなですが、加えてウェブ媒体さんにはショーの30分後には全ルックがあがります。

正直、ファッションってビジュアルで見るのが一番分かりやすいしパワーもあるから、色とか形とかディテールとかを知りたいなら、レビューの文章読むよりサイトで全ルック見た方が手っ取り早いわけです。

私自身、海外のコレクションは、他社サイトさんで全ルック見ますし。

新聞ってスペースが限られるから、載せられる写真は多くて1ブランドにつき2~3枚だし、印刷するためにどうしたってタイムラグが生まれます。

…こんなダメダメ尽くしダメ尽くしで、紙のレビューに意味なんてあるのか??

…ずーん。。。

って、改めて考えちゃったんですよねー。

前シーズンはインスタグラムが一般化して、誰も彼もがショー中にスマホで写真を撮る!というのがすっかり定着したタイミングだったので、特にそんな風に感じたっていうのもあります。

前シーズン(16年春夏)のアンリアレイジが、そういった状況を逆手にとって、スマホやカメラでフラッシュ撮影しないと見えない服を出したのは記憶に新しいですね。

その企画意図について、デザイナーの森永邦彦さんに尋ねた記事を15年11月27日付けの繊研新聞本紙から抜粋すると、

みんなはるばるパリまで来て、ショーを見るのでなく、写真を撮るのに必死です。今はそういう時代。だったら、写真に撮らないと分からないショーをやってやろうと思った」(森永)というように、アイロニーから着想したとも言えるショーだ。「SNSが広がって、ショーのアウトプット先としてSNSの重要度が増している」ことを背景に、SNSでのイメージ拡散の爆発力を狙った面も大きい。

といったことでした。

この森永さんの言葉を受けて、SNS時代の紙のメディアの存在意義について、私は更に考え込みました。

後日、森永さんのこのインタビューでも、そのあたりのことを語っていただいておりますので、良かったらお読みくださいませね。

まーでも、いつまでもグチグチグチグチと悩んでいてもどーにもならんので、新聞は新聞の、私は私のやれることをやるしかない!!!と思考を切り替えました。

で、新聞にやれることは何かって考えた時に、浮かんだ答えは何か。

それは…「ちゃんと書くこと」!!

…オーソドックス過ぎるーーーー。。

でも、“基本のき”がなんだかんだ言って重要かなと思いまして。

というか、我々はそれをやっていくしかない。

ルック写真から分かる情報は非常に多いですが、だったら紙面のレビューにはルックを見ただけでは分からんことを書くしかないわけです。

「今シーズンのコンセプトは~~です」みたいな、それリリースにある言葉やデザイナーが喋ったことをそのまま書き写しただけじゃん!みたいな内容ではなく(いやそういう情報ももちろん大事ですよ)、

出てきたルックを最初から最後まで細大漏らさず描写しました!(そんなの写真見た方が早いしそもそもそれで写真に勝てるわけないじゃん!!)みたいな内容でもなく、

ショーやプレゼンを実際に見て、私がどう感じたかを書くしかない。

デザイナーさんはどういうことを考えていて、それは世の中のどういう気分とつながっていて(もしくはつながっていなくて)、これまでと何が変わって、どんな風に前に進もうとしているのか、そして今の時代の中でそれは素敵なのかどうかを、記事にしていくしかないのだなーと。

そこには、文字として何を書くかだけでなく、紙面に載せる写真の大きさや枚数の多さ、どのブランドから順に書いていくか、といった表現も含みます。

ウェブはその性質上、全てがフラットになっていくものですが、一方で大小や順番のメリハリが付けられて一覧性があるのは、やはり紙の強みなので。

スージー・メンケスでもなければユナイテッドアローズの栗野さんでもなく、うちで言えば小笠原でもない私のショーの感想など読みたい人なんて稀でしょうし、

「あの小娘、なんかトンチンカンなこと書いてんなー、服のこと全然分かってねーな」と重鎮などには思われることもあるでしょう。

でも、業界紙でショーのレビューを書く担当をしている以上、文章でどう表現するかをもがき、探し、知識を積んでいくしかない。

スージーにいつか少しでも近付けるように、努力していくしかない。(彼女の原稿は教養やブランドへの愛が溢れ出していていつも素敵ですね。指摘の仕方もマイルド)

同時に、そういう風にちゃんとレビューを書くことが、ショーやプレゼンを見せてくれたデザイナーさんやブランドに対する礼儀だな、とも思うんです。

ショーを媒介としたコール&レスポンスとして、このショーを見て私はこう感じました、とか、逆にあんまりこうは感じませんでした、ってことをしっかり返すのが筋ってもんかな、と。

ショーのレビューを書くようになって丸7年ですが、その当初から

「デザイナーは、デザインを外したら売れないという責任の取り方がある。

バイヤーはいいと思って買ったものが売れなくて在庫になる、もしくは良くないと思って買い付けなかったものが他店で大ヒットしてしまう、という責任の取り方がある。

じゃあ、我々記者って、書いた記事に対してどう責任取るんだろう…

ということを考えてきました。

ある意味、我々記者ってフリーライダー(リスクを取らない人)です。もちろん、未熟なことを書いて「あいつトンチンカンだな」と思われるリスクはあるけど、それってデザイナーさんやバイヤーさんが背負うリスクに比べたら、すごく軽いと思う。

(いやもちろん、ブランド側から出禁を食らうという責任の取り方もありますよ。そういう時もあるでしょう、いつもだったら困るけど)

でも、フリーライダーな身だからこそ、もがいてものを作ったデザイナーさんに常にリスペクトを持って接しないといけないし、「何か違うな」と思うショーだったとしたら、違うと思ったよということをリスペクトを持って表現しないといけないなと思いまして。

(違うな、と思った時にそれを全く表現しない、匂わせないというのも、うちのような業界紙という媒体としてはまた無責任だな、と思うのです)

といったように、色んなことを考え、悩みながらショーのレビューというものを書いております。

が、かように偉そうに語って参りましたが、まだまだ全くもって未熟で、「五十君全然書けてねーじゃん」みたいな原稿の方が圧倒的に多いです。

…精進を重ねるのみ!!根性!!!

冒頭にも書いたように、明日14日には、メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク東京16年秋冬が開幕します。

※12日の土曜にティートトウキョウのショーがあったので、既に今季の東コレは始まっております。公式スケジュールが14日から、という意味。

今季も迷いつつ頑張ってレビュー書きますので、皆さま新聞を是非読んでくださいませね!!!! ←一番伝えたかったのはここ

主会場である渋谷ヒカリエのインフォメーションとかにも毎日新聞刺さってるはずです。

ウェブの繊研プラスにあげられる記事はほんの一部なんですが、そちらも是非お読みくださいませ~。

というわけで、「ウェブ時代に紙はどう生きるか」問題は現状全く先が見えず、私が上で語ってきたようなこと(=ちゃんと書くことが大事説)も、媒体の変化という大きなうねりの中ではあまりに無力な気もしています。

…が、記者として真摯にデザイナーさんのもの作りに向き合う、ということは、媒体がどうなろうが、究極紙が消滅しようが、変わることなく大事だなーと思っています。

と同時に、そんなことだけ言ってたら完全に時代に置いていかれるので、ちゃんとデジタル化もゴリゴリ進めるように媒体としても精進します!!

今日のまとめ:今季も東コレ楽しみです!!!!関係各位、明日から宜しくお願い致します!!!

以上!!



五十君花実 特技=ミーハーな記者・五十君がお届けする業界のよもやま話。パリコレから東コレ、ストリート、地方のおもしろショップまで、ニュースあるところに五十君あり!!…というスタンスが理想です

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