ノームコア死す~ R.I.P.(五十君花実)

2016/02/29 00:00 更新


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前回のブログで、「トーガ・プルラ」プレフォールのフェイクファーネタを取り上げたら、その直後のトーガのメインコレクション@ロンドンでリアルファーが出まくっており、

続くミラノコレクションも「春のパン祭り」ならぬ「春のリアルファー祭り」の様相を呈しておるとの報を受け、

現在ぐうの音も出ない五十君です、こんにちは。

小笠原(上司)には、「リアルファーがエシカルでなく、石油で作るフェイクファーがエシカルという考え方は浅はか過ぎる」と早朝からラインで叩き起こされた(小笠原は出張中のため時差がある)ことをここに書き記しておきます。

そんな小笠原が、最近ショーのBGMに関する日記を書いていてなかなか面白いので、皆さんも是非お読みくださいませね!!(=上司へのおもねり)

さて、ここからが今回の本題です。

今春、私はあることを確信致しました。

何を?

ノームコア(※)の終焉を!!

わーおめでとうございまーす!!パチパチパチーーー!!!

※ノーマル+ハードコアの造語。ごくごくフツーの格好こそが一番かっこいいという考え方であり、それを体現するファッションのこと。

14年の春以来、レディス、メンズともに市場を席巻し、マスマーケットにまで浸透しきったノームコアムーブメントですが、どうやら15〜16年秋冬をもってそのムードは完全に過ぎ去ったようです。

同様に感じていらっしゃる業界関係者の方も多いのではないでしょうか。

先日、「アカネ・ウツノミヤ」の16年プレフォール展に行った際、デザイナーの蓮井茜さんがこうおっしゃっていました。

「プレコレクションは、上質素材を使ったシンプルなものを出すっていうのがこれまで多かったんだけど、前シーズン(16年プレスプリング)にデザインの強いものを一部入れたら、バイヤーさんからの受注が一番良かった。店頭消化もいいんです。今は上質でシンプルなものより、クセの強いものが求められているんだと思う

この流れから、16年プレフォールコレクションでは、より“攻めた”デザインのアイテムを揃えていらっしゃいます。とっっってもかっこよかった。

こんな感じです。



どうですか、このどことなく90年代っぽい香りがするパワフルさ!!


蓮井さんは、つるつる赤ちゃん肌で華奢な体型をした、透明感のあるすごく可愛らしい女性なんですが、作るものが非常にパワフルで、そのギャップがとても素敵なのです。

そして、単に強いだけのデザインじゃなくて、着るとなんか女っぽくなるんですよ、ここの服は。そのバランスが本当にすごい。

伊勢丹やロンハーマンなど、有力店には大体入っている注目ブランドなので、皆さま是非店頭でチェックしてくださいませ。

さて。

アカネ・ウツノミヤはそもそも尖ってるテーストのブランドなので、そこが脱シンプルと言っていても、もっと広いマーケットには広がらないのでは??というご意見もあるでしょう。

しかし、今春夏はアカネだけでなく、沢山のブランドから同様のお声が挙がっております。

マッシュスタイルラボの「サロンドバルコニー」さんもそうおっしゃっておられましたし、マーキュリーデザインの「バナーバレット」さんもそう。

レディスだけでなく、メンズでも同様の傾向が出ています。

今春、井野将之さんがデザインする「ダブレット」では、やり過ぎなくらい刺繍を載せまくったスカジャンが、インスタでの拡散効果もあってヒットしているそう。

「こういう強いテンションの服が求められていると思う。ファッションが楽しい時代が戻ってきた!」と井野さんもおっしゃっていました。

 


刺繍重ね過ぎぃ~!!なデザインが特徴。
7万3000円とお安くはないですが、若い男子に売れているそう。


余談ですが、ダブレットの今春夏物のスケボー型クラッチバッグを、繊研でもお世話になっているライターの益井祐くんがメンズのコレクション時期に持っていて、よくインスタにあげていたんですが、その投稿を見たパリのコレットのバイヤーから、「あのバッグについて知りたい」という連絡が井野さんところにきたんだそうです。

…改めて益井祐のインフルエンス効果ってスゲエ!!!

話がそれましたが、現在行われている16~17年秋冬レディスコレクションでも、ロンドンの若手たちや話題の「グッチ」などで、「これでもか!!!」というほど強いデザインが広がっております。

見ていて本当に楽しいし、完全にトレンドの潮目が変わったという感覚があります。

いやはや。

ノームコアというワードが騒がれ出したのが、2年前の14年初春でした。

元々は、米「ニューヨーク・マガジン」が造り出した言葉で、「ごくごくフツーのファッションこそが一番おしゃれ!」という考え方として、世界中を駆け巡ったわけです。

極端なことを言うと、ノームコアって、「毎日毎日何着るか考えるのとか、マジで時間の無駄。ファッションというもの自体、人生の無駄。 無駄無駄無駄ァァァ!!!」みたいな考え方も含む概念でした。

その代表例とされたのが、スティーブ・ジョブズだったわけです。(彼が毎朝コーディネートを考える時間が惜しいがために、毎日同じ格好をしていたことは有名ですね)

これを「嫌ファッション主義」と呼ばずして何と呼びましょう。

(ちなみに、ジョブズ亡き後、このエクストリームな思想のグル=導師となっているのが、バイオベンチャー起業家のこの人のようです。でもなんか事業内容について問題も噴出しているようだけど)

逆に言うと、そういう嫌ファッション主義を生み出してしまうほど、従来型のファッションのビジネスモデルは、14年当時全世界的に曲がり角を迎えていたっていうことです。

言うまでもなく、その背景にはファストファッションの台頭、トレンドの短サイクル化、スマホやネットによる情報革命などがあるんだけれど。

…というような事情があったのにも関わらず、嫌ファッション主義としてのノームコアすら、単なるいちトレンドとして自分の中に取り込み、消費していってしまうファッションというものの軽薄さ、貪欲さには恐れいりました。

思い返してみると、14年春夏や続く秋冬は、「今季のテーマはノームコア!」と掲げているブランドが少なくありませんでした。

ファッション業界が、自らノームコアに乗っかっていった部分は多分にある。でも、結果としてそれが、自分たちで自分たちの首を絞めることにつながったわけです。

だって、ノームコアを体現するシンプル、ベーシックなアイテムだと、他社との差別化がすごく難しいですから。

そうなると、本当に上質な素材でシンプルなものを作っている一部のブランド(その最高峰がエルメスなわけだけど)を除いて、世の中の多くのブランドは、「他社製品とデザインで差別化できない以上、価格の安さで勝負するしかない!」という底なし沼にはまっていきます。

勝つためにはどんどん安くしていくしかない。

く、苦しい…!!!息ができない…!!!!←今ココ

…というのが、現在のファッション業界の有り様なわけです。

我々もメディアとして責任を感じています。

「ノームコアとか言ってる場合じゃない!目を覚まそうよ!!」みたいなことを、もっと書いてくるべきだったんでしょう。

(いや、一部書いてたりもしたんですよ、14年6月27日付けとかで。ゴニョゴニョ…という言い訳)

という反省を込めまして、本日2月29日付けの繊研本紙の1面で、「ノームコアにさようなら!」という記事を書きました。お手元にある方は読んでくださいませ。

「もう一度、ドキドキ、ワクワクするファッションを、業界として消費者にちゃんと提案して行きましょうよ」

「そういうブランドやメーカーを、微力ながら我々は応援しております!!」

という繊研新聞のステートメントとして、この記事をお受け取りいただけますと幸いです。

というわけで、本日は以上!! 

R.I.P.ノームコア!!! 安らかにお眠り!!!



五十君花実 特技=ミーハーな記者・五十君がお届けする業界のよもやま話。パリコレから東コレ、ストリート、地方のおもしろショップまで、ニュースあるところに五十君あり!!…というスタンスが理想です

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