【ゲームチェンジャーU35】⑥スプリング・オブ・ファッション社長 保坂忠伸さん

2017/05/08 06:50 更新


一時は自身もデザイナーを志したが、デザイナーのために現在の道に進むことを決めた

■クリエイターが活躍する場を


 ファッションは本来、多様なものだ。しかし、今は同質化が進み、服が売れないとまで言われている。そんな現状を変えるべく、新たなシステムの構築に挑んでいるのが、スプリング・オブ・ファッションの保坂忠伸さん(30歳)だ。ネットを活用したプラットフォームで、クリエイターとの出会いを創出する。


★連載スピンオフイベントを6月6日(火)に開催!! 詳細はこちらから


■質の高い人集める


 同社が提供するサービスには、クリエイターが自由に作品を投稿できるSNS(交流サイト)サービス「ソフコレクション」とネット上でのコミュニケーションを介して仕事を依頼できるクラウドソーシングサービス「ソフプロジェクト」の二つの機能がある。

 クリエイターにはデザイナー、パタンナー、ソーイングスタッフ、ヘアメイクアーティスト、モデル、フォトグラファー、スタイリストなどのカテゴリーがあり、ユーザーはソフコレクションを見て気になる作品があれば、ソフプロジェクトを通じて仕事を依頼できる仕組み。現段階では作品の投稿のみが可能で、クラウドソーシングサービスは4月に本格的に開始予定だ。

クリエイターが自由に作品を投稿できるSNS「ソフコレクション


 「質の高い人が集まる場にしたい」とブランディングを重視。「モードでかっこいいファッションの受け皿」となることを目指し、ハンドクラフト系の作品は扱わないと決めている。

 同事業を始めるきっかけとなったのは、大学卒業後に勤めていた経営コンサルを辞め、ファッションの道に進むことを決めてから見に行った専門学校の卒業ショー。学生によるコレクションブランド顔負けの作品を前に感動し、同行者に「これから海外などに出て活躍するのかな」と話したところ、「いや、この卒業ショーで終わりだろう」との返事にショックを受けた。「クリエイティブな人が世に出て行く機会が少ない現実」に歯がゆさを感じた。


■もどかしさが原動力


 ファッション業界に感じる矛盾も原動力の一つだ。今、世の中は様々な面で多様化しているのに、ファッションの世界では同質化が進む。「多様化は元々、ファッションの代名詞。人は本質的に他の人と服がかぶりたくないという感覚を持っていて、本来であれば多くのデザイナーが活躍できるはずなのに、そういう場所がないのはおかしい」

 ファッションのクリエイターが生きる道が限られている現実ももどかしい。他の業界ではフリーで活躍している人がたくさんいるのに、ファッションは企業に勤めるかブランドを作るかの二択だ。同社のサービスを生かして、その間の市場の創造ももくろむ。例えば、学生時代に面白い物を作っていた人が、企業に勤めながら週末は個人の活動をする。そんな流れを後押しするため「ユーザーとクリエイターの多様性をマッチングできたら」。

 同社のプラットフォームを活用し、新たな才能を発掘するコンテストも開催。2年以内を目標に、グローバルなコンテストを開く計画だ。「クリエイティブな人が活躍するための、日本発のグローバルプラットフォームになりたい」。穏やかな語り口が熱を帯びた。


86年山梨県生まれ。09年、武蔵大学経済学部卒。新卒で京セラグループの経営コンサル会社に入社。12年に退職後、フィリピンと米ニューヨークへの語学留学を経て、文化服装学院とここのがっこうに入学。その後、大手フリーペーパーの営業や大手人材派遣会社で働いて資金をため、16年7月に独立。同年10月にスプリング・オブ・ファッションを設立。

=おわり



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事